会議資料や企画書などビジネス系のデザインをする際、必ずといっていいほど多く登場するオブジェクトが表とグラフです。それぞれ、表であれば項目ごとに情報を整理し、グラフであれば営業数値の推移や構成比などを分かり易く伝える役割があります。
また、デザインの観点から考えた場合には表やグラフ以外の要素や、他のページとのバランスを取る必要もあります。そのためには形(レイアウト)や配色などを自由に編集できるようにしておく必要があります。
ここではPowerPointで表を一から作成する方法、Excelで表やグラフを作ってPowerPointで編集する方法。また、表やグラフをデザインする際のポイントも解説していきます。
PowerPointで表をイチから作成する
まずはPowerPointの標準機能を使い表を作る方法を確認しておきましょう。
行数と列数を指定して表のベースを作る
ホームタブのすぐ右側にある挿入タブの一番左側、表のボタンをクリックすると表の挿入と書いた小さなパネルが出てきます。8行×10列までの表はこのパネルの上でマウスを動かし、行数と列数を指定して作成します。
それ以上の大きさの表を作る場合には、その下にある表の挿入をクリックして、任意の行列数を入力します。すると標準的なスタイルが適用された表が出来上がります。
テキストを入力し、セルの大きさを調整する
出来上がった表にはそれぞれのセルをクリックすることで、カーソルが入り文字を入力することができます。
入力した文字のフォントの種類や大きさ、色なども自由に変更することができます。
罫線とセルの背景色を設定する
罫線はダブルクリックすることで、セルの内容にあわせて大きさが自動的に変わります。カーソルを罫線の上に持っていき、ドラッグをすることで任意の大きさに変更することもできます。
罫線の色や太さ、線の種類は、その罫線に隣接するセルを選んだ状態で表示されるデザインタブから色、太さ、種類を選択して、最後にセルから見てどの位置の罫線を編集するかを表のスタイルにあるボタンで選択して適用します。
背景色も同様にセルを選んだ状態で、表のスタイルの塗り潰しボタンから好きな色を選択して適用します。
全体のバランスやセル内の余白を調整する
デザイン的な観点からは、表全体のバランスやセル内の余白のとり方にも注目してください。
セルの大きさはそれぞれ内容量にあわせて調整し、バランスを整えます。内容量が少なければ列の幅を狭め、その分内容量の多い列に振り分けます。
セル内に入れた文字と罫線までの余白も調整し、狭すぎないようにしっかりとスペースをとりましょう。セル又は表全体を選んだ上体で、レイアウトタブからセルの余白ボタン、ユーザー設定の余白から左右上下の内部の余白を調整します。
Excelで表を作ってPowerPointへコピペする
資料の中で表を使う場合に、元のデータはExcelで作られていることが多いかと思います。一から作成する場合でも、PowerPointに比べてExcelのほうが表の扱いに長けているので、作るのが楽です。
ExcelからPowerPointへ表をコピペする
PowerPointへはExcelで作った表をほぼそのままコピー&ペーストして使うことができます。
Excelで作った表をドラッグして全て選択してコピー。PowerPoint上でペーストをした後、小さく出てくる貼り付けのオプションから、元の書式の保持を選択します。
するとExcelで設定した罫線の色や背景色などを、そのままPowerPointへ貼り付けることができます。
作りこみはどちらのアプリで行っても大丈夫
PowerPointへ貼り付けた表はそのまま編集が可能な状態になっているので、改めてPowerPoint上で他の文字やオブジェクトとデザインのトーンを合わせるなど作りこみをすることができます。
表の作成は、計算や数値の扱いに長けたExcelで行い、PowerPointに貼り付けたうえでデザインの作りこみをする。すると時短とデザインのクオリティUPを同時に行うことができます。
見やすくデザインされた表の作り方
操作に加えて、見やすく伝わるデザインの表をつくる方法についても確認をしておきましょう。レイアウトと配色の両面からみていきます。
文字量にあわせたサイズが重要。見やすい表のレイアウト
セル内の文字と枠線までの余白をとる
見づらい表を作ってしまう原因の一つに、余白をしっかり取っていないということがあります。
表は項目ごとに内容を分け、縦軸横軸で情報を整理する役割がありますが、余白が無いとほかの項目と接近しすぎてしまい、どこで情報が別れているのか分かりません。罫線とセル内文字の間にしっかりと余白をとり、セル同士がハッキリと分離している状態を作りましょう。
①表の項目名はセル内で「中央揃え」にし、文字の配置を「上下中央」にします。さらにセルの幅と高さを調整して、文字の天地左右に余白を作ります。
②数字は桁数が分かりやすいように右揃えが基本となるので、段落で「右揃え」にし、文字の配置メニューのその他のオプションで、テキストボックスの内部の余白から右の余白を調整し、数字とセルの罫線の間に余白を作ります。
表題は中央、内容は金額や数値は桁が分かり易いように右揃え、それ以外は左揃え
文字の揃え方でも見易さは大きく変わります。ヘッダーセルに入れるような表題の項目はセンター揃えを基本として、他の文字よりも目立つように、文字を大きくする、太文字にするなどします。
金額や人数、個数などを示す数字は、桁数が分かり易いように右揃えでレイアウトします。それ以外の文字は横書きであれば左揃えが良いでしょう。
セル内に入る文字量が一番多いセルにあわせて行の高さ、列の幅を調整する
余白と同様にセル自体や行の高さ、列の幅も手を入れます。中に入る文字量により高さと幅を決定しますが、同じ程度の内容量であれば同じ高さ、幅にします。
同じ程度の内容量にも関わらず複数の高さや幅のパターンが存在してしまうと、ガチャガチャと煩雑な表になってしまいます。セル内が2行となるなど、同じ行数の内容の場合には高さを揃えます。
高さと幅を見栄え良く整えるには、表全体を選択した状態で、レイアウトタブの「セルのサイズ」から「高さを揃える」と「幅を揃える」をクリックします。すると内容物にあわせてセルの高さと幅が、それぞれ同じサイズに揃います。
揃ったところで表全体を拡大・縮小して大きさ、形を整えます。表全体ではなく、特定の部分の高さ及び幅をそろえたい場合には、セル内にカーソルを入れてドラッグして選択状態にしてから「高さを揃える」「幅を揃える」をクリックすることで、個別に調整することができます。
セル内の文字が上下センターに入る場合には天地の空きを統一する
セル内の文字と罫線までの余白部分で、天地は全てのセルで同じになるように調整します。ここが揃っていると綺麗で見やすい表になります。セルの内容が2行以上になる場合には、内容の行間よりも天地の空きが大きくなるようにします。
文字を見やすく、周りとのバランス調整も。見やすい表の配色
セル内の文字をハッキリ見せるため、線のトーンをグレーなどに落とす
表の配色でまず確認して頂きたいのが、セル内の文字と罫線の色です。もしセル内の文字に黒を使っている場合には、罫線のトーンを少し変えて、グレーなどにしてください。罫線よりもセル内の文字のほうに目が行くようにします。
また、セル内の背景色と文字色のコントラスト(色の差、明度差)高すぎると、スクリーンに投影したときなどにギラギラ感が強く出て見にくくなることがあります。
黒い文字で背景が白い場合には、文字色のトーンを黒から濃いグレーへと少し落としてコントラストを下げる。または、背景をグレーにして同じくコントラストを下げることで見やすくすることができます。
セル内背景色と文字色のバランスをとる
セル内の背景色が濃い色、暗い色の場合には文字を白くしてヌキにするなどしましょう。文字を白ヌキにする場合に、背景色が濃い色の場合は細いフォントだと潰れてしまうので、少し太めのフォントにして白の面積を増やします。
薄い背景色の場合には、文字は黒のままでも大丈夫ですが、少し背景色を混ぜた黒に近い色でも、馴染んで綺麗に見えます。
複数行あり、表の幅が広い場合には、読み違えないように濃淡をつける
ある程度表の幅が広い場合、左から右へと読み進めていくときに上下の行と読み違えてしまうことがあります。その場合には一行ごと交互に背景色に色を着けます。濃淡の強さは、上下で隣り合う背景色が別の色と認識できる程度の強さで問題ありません。少しの差でも読みやすさが大分変わります。
ヘッダーセルの項目ごとに色を変えるなど、色を使いすぎない
ヘッダー行のセルには、他の行とは違う配色にして目立たせることが多いと思います。この時、項目ごとに全て色が違うなど闇雲に複数の色を使うのは避けてください。周りとのバランスが崩れ、見づらい表になってしまいます。
なるべく色数を抑えて、同系色を使って明度や彩度を変える事によって変化を出します。
止むを得ず複数の色を使う場合には、色相環の並びを意識した違和感の無い配色にしましょう。色相環の並びを無視して、多くの色を使った場合とてもバランスの悪い、チグハグな組み合わせの配色が出来上がってしまいます。
セル内の文字への装飾(ドロップシャドウや効果)などを行わない
最後に表の中に入れる文字には、ドロップシャドウなどの装飾を行わないようにしてください。表示自体が複雑な要素のため、さらに複雑な装飾を施してしまうと、見づらくなって本来の情報が伝わりません。
よっぽど大きな表で、少ない内容物であれば別ですが、基本的には装飾せず配色のみとします。
ExcelとPowerPointの連携でグラフを作る方法
グラフの場合には表と違い、初めから何かしらの数値データが必要です。そのため、PowerPointで一から作る場合もExcelが起動してきます。PowerPoint上のExcelに仮の数字があらかじめ入っており、そこから編集を加えるので、かえって手間になってしまいます。
数値を扱うのはPowerPointよりもExcelのほうが得意なので、グラフも作りやすいでしょう。
グラフはExcelで作ってしまうのが楽
ですので、グラフをPowerPointで使いたいときには初めからExcelを使ってグラフを作ってしまいましょう。色や、凡例など細かい部品は後から編集が可能なので、比率など数値が必要なグラフ本体をExcelできっちり作っておきましょう。
①Excelでグラフを作ってPowerPointにペーストする。
②PowerPoint上でグラフを編集する。
修正の有無により貼り付け方法を変える
Excelで作ったグラフをPowerPointで使うにはグラフ部分をコピーし、PowerPointへペーストします。ペーストしたときに小さく貼り付けのオプションが表示されます。このオプションは後々のデータ修正の有無により使い分けます。
②「元の書式を保持しブックを埋め込む」
左側の二つはブックを埋め込みます。元のExcelと切り離しているため、元のExcelを修正してもPowerPointへは反映されません。書式はPowerPoint上でデザインするので、元のExcelで作り込んでいる場合以外は「貼り付け先の書式を使用しブックを埋め込む」を選んでおけばいいでしょう。
④「元の書式を保持しデータをリンク」
リンクしてペーストした場合には、Excelで修正した内容がPowerPointへ貼り付けたグラフに反映されます。こちらも同じく書式についてはExcel上での作りこみがなければ「貼り付け先のテーマを使用しデータをリンク」を選択しましょう。
グラフを画像としてPowerPointへ貼り付けます。画像ですので、書式の変更はもちろんデータの修正もできません。加えて少しぼんやりとした画質になるため、この貼り付けオプションは特段理由がなければ使いません。
貼り付けたグラフを選択すると、グラフツールという括りで3つのタブが使用可能になります。
グラフツール > デザインタブ
デザインタブでは、「グラフの種類の変更」からグラフをリンクで貼り付けしている場合の、元となる数値データの編集。グラフを構成する要素をどのように配置するかといった「グラフのレイアウト」、プリセットの配色パターンを適用できる「グラフのスタイル」などの機能があります。
この中で覚えていただきたいのが「グラフの種類の変更」です。画像のように別の種類のグラフへと瞬時に変換できます。レイアウト都合や、伝わりやすさの観点からデータはそのままにグラフの種類を変更したい場合に使います。
グラフツール > レイアウトタブ
レイアウトタブではグラフを構成する要素一つ一つに対して、表示の有無や配置場所などを設定することができます。
ただしデザインの観点から、自由度の高いPowerPointで作成している利点を鑑みて、グラフそのものと目盛線などを残して後はPowerPointで作ってしまうのが大きさや色などを変更しやすいのでお勧めです。
画像の作例でも、棒グラフ本体と目盛り線以外はPowerPointで作っています。
グラフツール > 書式タブ
書式タブは、図形やテキストオブジェクトと同じように、グラフの各要素に対して塗りつぶしや枠線の設定を行います。
Excelからコピー&ペーストで配置したグラフにはOffice特有のプリセットカラーが適用されているので、各要素をスライド上のその他の要素にあわせて再度配色をし直します。
見やすくデザインされたグラフの作り方
最後にPowerPointでのグラフ作成方法に加えて、デザイン的な観点からの見やすいグラフの作り方をみていきましょう。
目的に合わせた種類のグラフを作りましょう
グラフはメジャーなところから棒グラフや円グラフ、折れ線グラフなどがありますが、そのデータを表現するために必要なのはどのグラフでしょうか。分かりやすいグラフ作りはここから始まります。
純粋な量や数の大きさの違いを示す場合には棒グラフを使用し、時系列で数の変化を追う必要がある場合には、折れ線グラフを使用します。
複数あるデータの内訳を示したい場合に、数値の合計が100%となる場合には円グラフを使用します。ただし、内訳の数が多い場合にはその量を表現しきれなくなります。その場合には帯グラフや棒グラフを利用します。
そのデータで言いたいこと、表現したいことが分かりやすく見せることができる種類のグラフをセレクトしてください。
余計なものを消してスッキリ、見やすいグラフのレイアウト
次にしていただきたいのが、見やすいレイアウトにすることです。そのポイントはできるだけ要素をそぎ落とし、シンプルにすることです。
各種タイトルやラベル、罫線や目盛りの数値、凡例など。デフォルトで表示されている情報の全てが必要でしょうか。その項目が必要だとしても、数字の刻みや罫線の量は多すぎないでしょうか。
本来必要な情報がスムーズに理解できるように、必要最小限の内容だけ盛り込み、その分文字を大きくしたり、レイアウトも見やすく配置をします。
色数絞って、注目データをハッキリと。見やすいグラフの配色
配色についてもレイアウトと同様に、必要最小限にして見せたい部分に目が行くようにします。
グラフ本体の色は基本一色とし、強調するべきデータのみ色を変えるなど、色を使う場合には理由と共に配色します。
シンプルなグラフは図形ツールで作ってしまおう
ある程度作り慣れ、作るグラフの方向性が見えていれば、一から図形ツールで作ってしまうのも手です。棒グラフなどはシンプルに図形ツールで作り、並べて、分かりやすくテキストを配置して完成させるのも良いでしょう。