デザインの基本を押さえ、紙とペンを使って考えたラフデザインも完成し、いよいよ実際にPowerPointを使ったデザイン作成をしていきます。
本サイトの「PowerPointの操作方法」カテゴリーでは、一般的なPowerPointの操作方法から少しデザインに寄って解説をしていきたいと思います。
デザインに便利な設定、デザインをより簡単に作るための操作方法などをご紹介します。
デザインを作り始めるその前に
まずPowerPointを起動して初めにしておきたいのが、デザインを作る下準備です。パソコンとデザインをするためのアプリ、PowerPointは準備が出来ていますが、そのPowerPointを自由自在に扱えるように、基本的な機能を把握しておきたいと思います。
デザインを作るための基本機能の把握と環境設定をしておくことで、より効率的に、確実に作業することができます。順を追って確認していきましょう。
どこに何がある?PowerPointの豊富な機能
PowerPointをはじめOffice系アプリケーションは機能が豊富に用意されています。同じ操作をするにしても多くのアプローチが用意されており、目的の機能がどこに格納されているのか探すのに時間が掛かってしまうことも。
無数の機能があるPowerPointも実際に使う機能はそこまで多くはありません。特にデザインに必要な機能と、その機能がどこに格納されているのかあらかじめ確認して覚えておきましょう。そうすることで短い時間で作業をスムーズに行うことができます。
全ての操作の起点となる、リボンインターフェイス
Office系アプリケーションではおなじみの「リボン」インターフェイスは2007のバージョン以降に搭載され、一番大きな面積を占めたUIで、使用頻度も高いでしょう。上部にあるタブで関連の機能ごとにグループ分けされたタブで切り替えることができます。
初期状態で常に表示されているのは以下の9つのタブです。もちろん全て覚える必要はありませんが、大まかにどのような機能がどのタブに含まれているかを把握しておきましょう。
ファイルタブ
ファイルの保存から、既存ファイルや最近使ったファイルのオープン、新規作成や印刷、詳細な環境設定が出来るオプションなどがあります。
保存や印刷などはそれぞれショートカットが用意されているので、さほど使用頻度は高くありません。最近使ったファイルの名前や格納場所を忘れてしまった場合や、環境設定を変更したい場合にはここから辿ります。
★初めに覚えたいファイルタブ関連のショートカットキー
保存 Ctrl + s
印刷 Ctrl + p
ホームタブ
コピーやペースト、新しいスライド(ページ)の追加、フォントの変更や大きさ等の変更、段落の設定や図形の描画などの機能があります。
初期状態で常に表示されているタブとなり、一番使用頻度が高いでしょう。文字を打ち込んだ後にフォントの大きさ、色を変更する。必要な図形や線を配置して色や太さを変更するなど、多くのデザイン作成はこのタブを起点としておこないます。
挿入タブ
主にPowerPoint上で行数と列数を指定しての表やグラフの挿入、外部から写真やイラストなどの画像ファイルを読み込んで配置するために使用するタブです。
それ以外にも図形やテキストボックスなどが挿入できますが、ホームタブでも同様のことが出来るため、このタブを開いての挿入でなくとも良いでしょう。他のタブで扱いのないオブジェクトを挿入したいときに、このタブの存在を思い出し、開いてみてください。
デザインタブ
A4やA3といった紙や、4:3や16:9といった画面サイズの変更ができるページ設定。フォントや配色があらかじめ設定されたデザインテンプレート「テーマ」の選択、通常は白で設定されている背景色などの設定ができるタブです。
このデザインタブではとても便利そうな「テーマ」を使うことができますが、本サイトでお伝えしたいデザインにおいては、ほぼ使用することがありません。理由としてはデザインの内容、伝えたいことにプリセットから選択して合わせるのが難しく、使いどころに困ってしまうデザインが多いためです。
本サイトではデザインの内容に合わせてオリジナルのデザインを作っていきます。このデザインタブはページのサイズをA4かそれ以外にするなど、ページ設定をする際に使用します。
また、背景色の設定もこのタブで行えますが、マウスの右クリックで表示されるコンテクストメニューを使うことで、どのタブを表示させている時でも同様の操作を行うことが可能です。
画面切り替えタブ
複数枚のデザインされたスライド(ページ)をスライドショーとして再生する時に、画面全体をどのように切り替えるかの動きを設定するためのタブです。
なにも設定していない場合にはパッと画面が切り替わるだけですが、ここでの設定によりじわっと次の画面が浮き出てきたり、次の画面が右から現れて左へ押し出されるように切り替わるなど様々な動きをつける事が可能です。
音を鳴らしたり、切り替えを自動にしてタイミングも細かく設定することも可能ですが、本サイトでのデザインでは使用しません。ページ個々のデザインと動きはまた別の要素となるため、動きをつける前にデザインを完成させます。
PowerPointのなかでもこの画面切り替えや、アニメーションはとても派手な機能でカッコいいプレゼンテーションをするために使いたくなる方もいるかもしれません。が、動きをつけることは静止画で見せるよりもさらに難易度の高い技術が必要になります。
画面の切り替えは極力シンプルに。まずは伝わるデザインを作るところから、本サイトでは取り組んでいきます。
アニメーションタブ
前項の画面切り替えタブでは1枚のスライド全体を動かしますが、このタブではさらに細かく文字や図形などオブジェクト単位で動きを付ける事ができます。
このタブも本サイトでは扱いません。このタブではこんなことが出来ると覚えておけば良いでしょう。
スライドショータブ
作ったスライドをスライドショーとして再生する際に使用するタブです。スライドの再生から、非表示にしたいスライドの指定、途中から再生する場合の設定などができます。
このタブで主に使用するのはスライドショーの再生開始くらいですが、ショートカット(F5)を使用することでどのタブを表示しているときでも再生が開始できます。ショートカットキー(F5)を覚えてしまいましょう。
また、デザインを作っているときもデザインのみを大きく、全画面表示をすることで、出来上がりの確認をすることもできます。そんな時にもショートカット(F5)を覚えておくと瞬時に呼び出すことができるので便利です。
校閲タブ
校閲は、誤りや不備な点などを調べることですが、校閲タブにはスライド内のスペルチェックや、内容の修正を指示するためにコメントを挿入する機能などがあります。
一見便利そうなスペルチェックですが、ごく限定的なチェックのため、最終的な文字の打ち間違えなど、表記の抜け漏れは制作者自ら行う必要があります。
表示タブ
タブ名の通り、スライドの表示方法を変更する機能が格納されています。一番左側にある「プレゼンテーションの表示」項目では、4つの表示メニューがあります。
マスター表示は新規スライドを追加する時の雛型(マスター)を編集する機能です。マスターには通常時に使用するスライドマスターと配布資料マスター、ノートマスターの3種類があります。
本サイトでは雛型を使わずにデザインを作っていきますが、ページ数の多い資料を作る際には効率化を図ることができます。また別途の記事で解説したいと思います。
次にあるのがルーラー、グリッド線、ガイドの3項目の表示/非表示の切り替えチェックがあります。
ルーラーはWordなどでもお馴染みですが、テキストボックス内で行頭位置を変更したい時、箇条書きなどで行頭記号と本文の空きを調整するのに使用します。
グリッド線とガイドは図形等のオブジェクトを移動、整列する際に目安となる線を表示します。デザインの基本は整理整頓なので有効な機能となりますが、デザインが込み入ってくると線があるとゴチャゴチャしてしまうので、本サイトでは下記に紹介するスマートガイドを使用していきます。
上記表示項目の右下にあるポップアップマークをクリックし、グリッドとガイドのウィンドウを表示させてください。そこにある「描画オブジェクトをほかのオブジェクトに合わせる」と「図形の整列時にスマートガイドを表示する」の2項目にチェックを入れてください。
するとオブジェクトを移動するときだけ、移動の目安になる破線が表示されます。また、オブジェクト同士を近づけると吸着し、ピタッと綺麗にあわせることが出来ます。
ズームの項目はそれぞれ拡大率を指定しての拡大/縮小と、現在のウインドウいっぱいにスライドを表示させることができます。この機能は表示タブから選択しなくとも、画面右下からいつでも同様の機能にアクセスすることが可能です。
また、ズーム機能についてはマウスを使った操作が効率的なので使えるようにしておきましょう。キーボードのCtrlキーを押しながらマウスのホイールを回転するとスライド全体を拡大、縮小することが出来ます。
また、なにかしらのオブジェクトを選択した状態でCtrlキー+マウスホイールの回転で、選択したオブジェクトを中心に拡大、縮小をすることができます。個々のオブジェクトを編集する際に便利です。
スライド自体はカラーで作成していると思いますが、このグレースケールや白黒で一時的に表示させることが出来ます。そのデザインをモノクロで印刷した時でも意味合いが通るように、この機能を使って確認するときなどに使えます。
ウィンドウメニューは複数枚にわたるスライドがある場合に、ページの離れた2枚を同時に表示させながら編集したい場合、同じページの中で別々の場所を同時に拡大しながら編集したい場合などに使用します。
ウィンドウの切り替えは、複数のPowerPointファイルを開いている際に切り替えが出来ます。この操作はキーボードのCtrlキー+Tabキーで行うことも可能です。Altキー+Tabキーでは他のWindowsアプリケーションも含めた切り替えになります。
マクロ機能については本サイトでは割愛しますが、PowerPointの操作をプログラムで制御して自動化したり、新たな機能を追加することができます。マクロを使用する場合には、環境設定から開発タブも表示させることで新規の開発を行うことが可能です。
また、その他のタブとして環境設定から表示設定する必要がある「開発」タブや、図形を選択している状態のときに表示される、「書式」タブ。表を選択している状態で表示される「デザイン」と「レイアウト」タブがあります。このあたりも別途詳しくご紹介します。
途中で変えるのは結構大変、初めに決めたいページ設定
デザインを作り始める前に各機能の概要と、その格納場所を確認しました。そしてもうひとつ重要なのがページ設定です。
そのデザインは最終的にモニタに映し出すプレゼンテーションなのか、紙に印刷する配布資料なのか。さらに映し出すモニタの比率は、現在主流になっているワイドモニタか従来比率のモニタか、またはiPadなどの端末か。印刷の場合には紙のサイズの確認も必要です。
アウトプットのサイズとページ設定
ここでは大まかに下記の3パターンに分けて考えたいと思います。
・モニタに映して使用する
・紙に印刷して使用する
まずモニタと印刷の両方で使用する場合には、スライドのモニタサイズ指定で「A4 210×297」を選択すると良いでしょう。厳密な紙のA4サイズよりも少し小さいサイズになりますが、モニタと紙の両方に対応が可能です。
モニタのみの使用でワイドモニタを使う場合には、スライドのサイズ指定で「画面に合わせる(16:9)」を選択し、従来のモニタサイズで使う場合には「画面に合わせる(4:3)」を選択してください。iPadなどタブレット端末で使用する場合にも「画面に合わせる(4:3)」が使えます。
また、紙のみで使用する場合には「幅(W)」と「高さ(E)」を実際に使う紙のサイズに設定してください。A4サイズの横の用紙で印刷する場合には、「幅 29.7cm」「高さ 21.0cm」を指定します。
後で変更するとレイアウトが崩れてしまうことに
初めに設定せずに、デザインを作った後で変更した場合は幅が狭まるなどしてレイアウトが崩れてしまうことがあります。また、自分以外の作成者が作ったデータを使用する場合でもサイズの変更があるかもしれません。
もしレイアウトが崩れてしまう場合には、新規に正しいサイズでファイルを作成したうえで、コピペしてレイアウトを整えると良いでしょう。
こまめに保存して万が一に備えたい
この項で最後にお伝えしておきたいのが保存まわりです。幸いPowerPointは他のアプリに比べ、非常に安定しており作業中にフリーズしたり、アプリが落ちてしまうようなことはめったにありません。
万が一のときもこまめに保存していれば安心
それでも古い内容で上書き保存してしまう「先祖がえり」が起こってしまったり、適切なファイル名を付けて保存していなかったために、他のファイルと混ざり、開いて一つずつ確認が必要になったりといった保存まわりのトラブルは良くあることです。
ファイルの保存もショートカットキーCtrl+sが用意されていますので、一度正しいファイル名で保存をし、大きな変更を行った場合や、しばらく作業した後には定期的に上書き保存をするようにしましょう。
PowerPointでの保存形式
よく使う保存形式についても確認しておきましょう。大きく分けて3つあります。
2.配布資料用の形式・・・PDF(拡張子 .pdf)
3.常にスライドショーで開く形式・・・PowerPointスライドショー(拡張子 .ppsx)
以上の3つを覚えておけば良いでしょう。また、データを渡す相手の環境がOffice2003以前のバージョンだった場合には1の用途であれば、PowerPoint97-2003プレゼンテーション(拡張子 ppt)の形式。3の用途の場合にはPowerPoint97-2003スライドショー(拡張子 .pps)を使ってください。
2の配布資料の場合には無料のアプリケーションで閲覧可能なため、環境の依存はほぼありません。
ファイル名、フォルダ名のつけ方
こまめに保存をすることに加えて、紛失や上書きミスなどの事故を防ぐために、ファイル名も適切なものを付けることをお勧めします。
基本は「日付+内容が分かる名称+バージョン」が良いでしょう。例えば「【2018-06-03】新規アプリ開発資料03」といった具合です。このファイル名の場合には2018年6月3日に作成(開始)されたファイルで、内容は新規アプリの開発について。手が加えられてファイルのバージョンが3番目というものです。
ファイルのバージョンについては、大幅にレイアウトを変更した場合や、ある程度作業が進んだ場合には別名で保存することで、元の状態に戻したい場合やデザインを比較検討したい場合などに使うことができます。
フォルダ名も同様で、「日付+内容が分かる名称」としておくと後で探しやすく、整理整頓もしやすいでしょう。