デザインを作るうえで使うのが、テキストとグラフィック。テキストは打ち込んだテキストデータに、フォントや色などを設定してPowerPointで作り出すことができます。また、グラフィックの中でも写真やイラストなどはファイルとして読み込みます。表やグラフもPowerPointで、場合によってはExcelも連携させて作り出します。
それ以外にもPowerPointには図形ツールというパワフルな機能が備わっています。豊富な機能の基本だけ押さえておけば、おおよそデザインに必要なパーツは全て作り出すことができます。この記事では図形ツールの基本的な使い方から、デザイン用のTipsまでご紹介します。
図形の挿入方法。まずはシンプルな正方形/長方形から
まずは図形の挿入方法、そして一番使用頻度の高い正方形/長方形から作り方と設定から見ていきましょう。図形の挿入方法は共通のものですので、正方形を作ることができれば他の形も自由に使うことができます。
作成はホームタブ右寄りにある「図形描画欄」の中、「図形メニュー」から作りたい図形を選択します。するとスライド上のマウスカーソルが「白い矢印」から「+」へと形状が変化します。この状態で好きな場所をクリックすると正方形、ドラッグすると好きな大きさの長方形を作ることができます。
装飾キーとの組み合わせで形が変わる新規作成
正方形と長方形の作り分けは「Shiftキー」でも可能です。ドラッグしている最中に「Shiftキー」を押すと、高さと幅が等しくなり、正方形のまま好きな大きさで作成することができます。
●Ctrl + ドラッグ … ドラッグの開始点を中心として図形を作成
●Shift + Ctrl + ドラッグ … ドラッグの開始点を中心として正方形を作成
また、通常はドラッグの開始点が図形の左上の頂点となりますが、「Ctrlキー」を押しながら作成すると、ドラッグの開始点が中心となって図形が作られます。
作成後の変形、回転と複製方法
作った後にはテキストボックスと同様に、操作ハンドルを使っての変形や回転が可能です。
作った図形の複製は、図形を選択した状態で「Ctrl+c」キーでコピーし、「Ctrl+v」キーでペーストすることで行えます。「Ctrl+v」でペーストした場合には、元の図形の上に少し移動した場所に複製が作られます。
また、「Ctrlキー」を押しながら図形をドラッグすることで、移動しながら複製を作ることが可能です。同じものを直線状に並べたて作りたいときなどに威力を発揮します。水平、垂直に移動を固定するにはさらに「Shiftキー」も同時に押します。
塗りつぶしに、枠線に、透過効果も押さえておきたい
新規に図形を作った場合、出来上がるのは青い塗りつぶしと、少し濃い青の枠線が付いたものが出来上がると思います。この塗りの色や枠線の有無などを変更するには、図形を選択した状態で、図形描画の右側にある各設定メニューからおこないます。
また、図形描画パネル右下のポップアップから図形の書式設定を呼び出すことで、これらの設定をまとめて行うことが可能です。透過性の項目を設定することで透かせることもできます。
繰り返し使うなら既定の図形に設定すると楽
ある特定の書式設定を施した図形を繰り返し使いたい場合、新規に図形を作ると毎回デフォルトの書式になってしまい、その都度枠線を外したりと少々手間になってしまいます。
一つ作って複製することもできますが、一時的にデフォルトの書式(既定の図形)を変更することもできます。任意の書式を設定した図形を選択した状態で右クリック、出てきたメニューから「既定の図形に設定」を選びます。
すると図形の形状を変えて新しく作成しても、同じ書式が設定された状態で作ることができます。枠線が無い図形を複数作る必要がある場合などに威力を発揮するでしょう。
いろいろ使える、角丸四角形の作成と設定方法
正方形/長方形とあわせて使いどころが多いのが角丸四角形です。角丸の大きさを変更してデザインの雰囲気に合わせたり、塗りつぶしを無しの枠線のみにして、枠として使うこともできます。
新規作成と角丸の調整方法
新規の作成方法や変形、書式の設定などは他の図形と基本的には同じです。ひとつ違うのが、作成した図形を選択すると変形用の白いハンドル、回転用の黄緑のハンドル、それともう一つ黄色いひし型のハンドルが表示されます。
この黄色いハンドルを左右に動かすことで角丸の大きさを変更することができます。大きくすればポップな印象に、小さくすればシャープなイメージになりますね。
内容物に応じて使い分けたい角丸の大きさ
角丸のサイズは雰囲気によっての使い分けもありますが、中に入れるテキストの量によっても使い分ける必要があります。ここでもデザインに重要な余白がポイントになります。
下の図は角丸の大きさの違いと、必要な余白を表したものです。角丸が大きい場合には、その分角丸が小さい場合よりも広く余白を取る必要があります。内容物に合わせて、上手く使っていきましょう。
直線、矢印、コネクタ。思い通りの線を描くには
続いてはビジネス系の資料でも多く使うであろう、線についてみていきます。ガントチャートや組織図、業務フロー図などさまざまなところで使用する直線や矢印、接続された線(コネクタ)などです。
ツールに独特の操作方法があり、思い通りの形にすることができないなんてこともあるかも知れません。そのあたりの正しい作成方法を知っておきましょう。
水平、垂直な線の書き方と各種設定
直線を描画するには、「図形ツール」から「直線」を選択して必要な長さの線になるまでドラッグします。この時に「Shiftキー」を同時に押すことで水平、垂直、そして斜め45度に固定した線を作成することができます。
一旦直線を作った後で長さを変更したいといった場合、図形の変形と同じように直線の両端にある「白いハンドル」を移動することでも長さを変更できます。
また、角度を変更したいときには、線を選んでいる状態の時だけ表示される書式タブの「配置欄」から「回転」を選んで設定します。あとで水平に戻すことなども考え、キリのよい角度(5度刻みなど)で回転させるのがお勧めです。
回転は15度刻みであれば「Shift+カーソルキー」で適用することもできます。
線の色や太さ、種類などを変更するには「図形の枠線」から設定をします。図形の書式設定を開いてしまえば複数の項目をまとめて設定できるので便利です。
野暮ったい矢印と格好良い矢印の違いと作り方
線の設定項目の中には矢印を作る設定があり、様々なタイプの矢印を作ることができます。自由度が高い反面、気をつけないと格好悪い矢印を作ることも出来てしまいます。
ポイントは矢印を支える線の太さと、先端の三角形の大きさのバランスです。線が細いのに極端に幅広の三角形だったり、線が太いのに、極端に細長い三角形だったり。
矢印の設定が手間で、作りたい矢印のイメージがある場合には、他の図形を使って自作してしまうのも手です。二つの図形、長方形と三角形を組み合わせて、バランスの良い矢印を作りグループ化します。
ただし、あくまでも2つのオブジェクトをグループ化しているだけですので、グラデーションは普通に適用することができますが、枠線を付けると元のオブジェクトの形に沿って表示されてしまいます。
そこで図形の合成機能を使って2つの図形を合体し、1つの図形にします。PowerPoint2013、2016をお使いの方は2つの図形を選択した状態で表示される「書式」タブから、「図形の挿入」欄の「図形の結合」メニューをクリックします。その中から、「接合」又は「和集合」をクリックして二つの図形を合体させます。
PowerPoint2010を使っている場合にはまず、図形の合成機能を使える状態にする必要があります。一番左にある「ファイル」タブを選択し、「オプション」をクリックします。左側の一覧から「クイック アクセス ツール バー」を選択します。
PowerPointウィンドウ上部にあるクイックアクセスツールバーは、自分の好きな機能を登録しておくことのできる場所です。デフォルトの状態では「上書き保存」と「元に戻す」、「やり直し」の3つほどしか登録されていません。ここに新たに「図形の合成」メニューを加えて使えるようにします。
クイックアクセスツールバーの設定画面で、「コマンドの選択」メニューから「リボンにないコマンド」を選択します。下に表示されるメニューの一覧から、「図形の合成」を選択した状態で追加ボタンをクリックします。すると右側の欄に追加されるので、OKボタンをクリックして戻ります。これで「図形の合成」機能を使う準備ができました。
合体したい2つのオブジェクトを選択した状態で、新しくクイックアクセスツールバーへ追加した「図形の合成」をクリックします。出てきたサブメニューの中の「図形の接合」をクリックします。すると2つの図形が1つになり、図形の枠線も図形に沿って表示されます。
曲線をともなう矢印
曲線の矢印は図形ツール基本図形「円弧」から作ります。図形ツール内には曲線を描くための線「曲線」が用意されていますが、独特の操作感で思い通りの線を描くのはなかなか難しいです。「円弧」で曲線のベースを作り、必要に応じて変形させると良いでしょう。
まず図形ツールの基本図形「円弧」を選択し、Shiftキーを押しながらドラッグします。すると1/4の円弧を描くことができます。円弧には二つの黄色いハンドルが付いており、ドラッグすることで円弧を伸ばして円に近づいていきます。
目的とする長さのところで止め、図形の書式設定から線のスタイルを設定し、希望の形にもっていきます。図形ツールに備わっている通常の変形ハンドルでバリエーションを持たせることも出来ます。
もうイライラしない。思い通りのルートで接続できるコネクタ操作
曲線と並んでもう一つ、使用頻度が高く描画にてこずるのが接続コネクタです。業務フロー図や組織図などオブジェクト同士の関連性を表現するために欠かせないコネクタ。図形を接続することもあれば、読み込んだ画像を接続することもあるかと思います。
難しいのは定型の図形ではなく、様々な形の画像を接続する場合でしょうか。繋ぎたい場所同士を綺麗に結ぶことがなかなか出来ないといったことがあるかも知れません。
図形ツールからコネクタを選択して、接続したい図形に近づけるとコネクタが吸着する赤いポイントが表示されます。その赤いポイントから、接続先に表示される赤いポイントに接続します。接続した後でコネクタの線を選択すると、黄色いガイドが表示されます。そのガイドをドラッグして目的のルートに修正します。
例えば正方形には天地左右に1つずつ赤い吸着ポイントがありますが、この4箇所以外の部分に接続したい場合、コネクタの先を近づけても思うようにいかず、後で黄色いガイドで修正しようにも思うような形になりません。
そんなときにはコネクタを接続したい部分に仮で図形の円を作って配置してしまいます。円には天地左右と斜め方向に赤い吸着ポイントがあり、コネクタの開始点と終点に円の図形を配置しておくことで、簡単に綺麗なコネクタを作成することができます。
コネクタが配置できたら円は削除してしまっても、コネクタはその場所に残ります。吸着する状態で残したい場合には、円の塗りつぶしと枠線を無くして透明のオブジェクトにし、グループ化してしまえばOKです。
デザインで使える図形はこう作る
最後にもう少し、使用頻度の高いデザインオブジェクトの作り方を見ておきましょう。
爆発よりも星でシャープに目立たせる
バクダンだったり、バチバチだったり、呼び名は色々ありますが、デザイン内で目立たせたい文言や数字などの下に配置する、トゲ状のオブジェクトがあります。
PowerPointでは「爆発」という名前で図形ツールに用意されていますが、さほど良い形ではなく場所をとってしまうため、文字を入れにくい、レイアウトしにくいオブジェクトとなっています。
そこでこの爆発の代わりに使っていただきたいのが、同じ図形ツール内にある「星」です。トゲの数が8から32個のものまであり、円に近い形状で余分な隙間がなくレイアウトしやすい形をしています。
作った後で黄色いハンドルをドラッグすることにより、棘のバランスが変更できます。また、色を変えていくつか重ねることでグラデーション状のブジェクトも作ることができます。是非使ってみてください。
思い通りの吹き出しは、二つの図形で自作する
もう一つ最後に、良く使うオブジェクトとして吹き出しがあります。会話を表現するときにはもちろん、ある文言への注釈として吹き出しを使って説明を入れる場面などがあると思います。
しかしながらPowerPoint標準の吹き出しは、先端部分(しっぽ)の位置や長さの調整がし辛く、角丸吹き出しでは、角丸部分の大きさ調整が効きません。
そこで、デザインにマッチした吹き出しは、二つの図形を使って自作してしまいましょう。
まず、吹き出しの内容が入る部分を内容物に合わせて作ります。会話であれば円形、説明であれば長方形、意図などは角丸にしても良いでしょう。そして、先端部分は三角形の図形を変形させて配置します。
ベースの形状と先端部分が出来たら、図形の接合を使い合体させます。
自分専用使える図形ライブラリで時短作成
デザインに使える図形には作り方さえ知ってしまえば簡単なものも多いですが、毎回新規に作り起こすのは効率的ではありません。
良く使うもの、また他のデザインでも使いたいものなどは一つのファイルにまとめて保存しておきましょう。使えそうなものを作るたびに追加していれば、自分専用のデザインネタライブラリが完成します。
PowerPointで作る図形について色々なパターンをみてきました。この記事にある内容を押さえておけば、おおよそどんな形状でも作り出せるかと思います。もし上手くいかない、こんな形が作りたい、というのがあればお問い合わせください。